基礎工事とは
建物を建てる際の一番初めの工程が基礎工事です。基礎とは建物を支える重要な箇所であり、この基礎工事により建物の耐震性が左右されるといっても過言ではありません。住宅購入を考える際には外装や内装といった目に見えるものに興味がいきがちですが、基礎工事は建物づくりにおいて何よりも重要になる工事です。
基礎工事とは、建物の土台となる基礎部分を作る工事で、建物の丈夫さを左右するとても重要な工事です。基礎は鉄筋コンクリートで作られています。地盤と建物をつなぐパイプ役となって建物の重さなどの縦向きの力や、地震の揺れなどによる横向きの力を建物から地盤に伝えます。それにより不同沈下(ふどうちんか)という建物の一部分だけが沈んで傾いてしまう現象を防ぐことができます。
一般的な基礎工事の流れ
基礎工事は、宅地の造成工事の後、建物の建築工事としては最初に行われる工程です。一般的に新築の木造戸建て住宅の場合施工期間は6ヶ月ほどで、このうちおよそ1ヶ月、つまり工事期間の6分の1をかけて基礎工事は行われます。
【基礎工事の一般的な施工手順】
・地盤の調査
・地縄張り・遣り方工事
・掘削工事
・砕石敷き
・捨てコンクリートの施工工事
・鉄筋や型枠工事
・コンクリートの打設工事
・仕上げ
STEP1 地盤の調査
基礎工事を開始する前に地盤調査を行います。新築でも建て替えでも安全のために必ず実施する工程です。
地盤の強度や軟弱性、硬さなど、そしてどれくらいの建築物の重さに耐えられて、沈下に抵抗する力があるかを調査することで、どの基礎工事を実施するのが適しているか検討します。
調査の結果、基礎工事では補いきれないほど地盤が弱かったり、予定していた基礎工事では安定性に不安がある場合には基礎工事の前に地盤改良工事を行います。
STEP2 地縄張り・遣り方工事
地縄張りとは、敷地内に縄やビニール紐などを張る仮設工事で、実際に建築する建物の位置や部屋の配置などを確認するために行います。
遣り方とは、字なわばりの外側に木の杭や板などを張り巡らせて、建物の正確な位置や基礎の高さ、水平などをわかるようにする仮設工事のことを言います。
後々、基礎のコンクリートなど動かない物へ目印(基準墨)をつけ終えると、地縄張りと遣り方は役目を終えて撤去されます。
STEP3 掘削工事
基礎を造るために土地を掘り起こす工事で、根切りとも呼ばれます。
基礎を敷設する箇所を、基礎の底となる地盤までパワーショベルなどの重機を用いて土を掘ります。
基礎工事の工程の中では最も時間を要する工事で、排水工事と同時に施工することも少なくありません。掘削作業中に配管などが発見された場合には配管を損壊しないよう、手掘りなどの対応も必要となり、より時間がかかることになります。
STEP4 砕石敷き
建物の基礎を配置する箇所に細かく砕かれた石(砕石)を敷き詰め、ランマーという機械を用いて地盤を固める工事です。
敷き詰めた砕石は、機械を用いて転圧をし、締め固めます。地盤を強化し、建物の沈下を防止するための作業で、この地盤を固める作業のことを地業といいます。
STEP5 捨てコンクリートの施工工事
捨てコンクリートは、実際に建物を建てる位置を確認するために施工するもので、工事を進めやすくするためにとても大切な作業です。補強のものではなく、強度は求められていません。
なお、コンクリートが乾くまでに数日かかります。
STEP6 鉄筋や型枠工事
基礎を鉄筋コンクリートで形成するために、鉄筋(鉄の棒)を格子状に組み立てていく配筋工事を行います。配筋は基礎の寿命や強度に大きく影響する工程のため、作業内容が法律(建築基準法)で細かく定められています。
配筋行為が完成したら捨てコンクリートに記した基準墨をもとにコンクリートを流し固めるための型枠を組みます。型枠は木製や鉄製のものを使用します。型枠組が完成すると、建物と基礎をつなぐ金属製の部材(アンカーボルト)を設置します。
STEP7 コンクリートの打設工事
型枠の中にコンクリートを流し込むことを「コンクリート打設」と呼びます。まずは基礎のベースとなる型枠にコンクリート打設をします。そのベースが乾燥したら、次は基礎内部に打設します。コンクリートを流し込んだ後は振動を発するバイブレーターと言われる機械を利用し、コンクリートなかの空気を抜くなど、隙間なく敷き詰めます。中の空洞が多いほどコンクリートの強度は低下するので、必要不可欠な作業です。
コンクリートはおおよそ3~10日ほどで歩ける程度の硬さまで乾きます。その間コンクリートをブルーシートなどで覆い、適度な温度・湿度を保ちながら外部からの衝撃や風雨から基礎を守ります。
完全に乾燥するまでには1ヶ月ほどかかり、この期間を養生期間といいます。
STEP8 仕上げ
養生期間を終えたら型枠を外します。
その後、コンクリートにひび割れなど初期の不良が発生していないか、仕上がりの状態を確認します。その際、アンカーボルトがコンクリート打設にずれたり曲がったりしていないか、なども重要なチェックポイントです。
基礎工事の種類
基礎工事にはいくつかの種類があります。代表的なものとして杭基礎、ベタ基礎、布基礎、独立基礎、SRC基礎が挙げられます。
まずは地盤調査を行うことから始め、建物の規模や地盤の強さ、施工条件などにより使い分けます。
杭基礎
杭基礎は、杭を直接地面に差し込む工法です。支持層と呼ばれる頑丈な地盤まである程度の深さのある軟弱な地盤の場合などに適しています。
杭を支持層のある数メートルの深さまで打つので、住宅を安定させるだけでなく、地震などによる液状化も防ぐことができる点がメリットです。一方で、地盤の軟弱な層が厚い場合はその分長い杭が必要になり費用がかさんでしまうのがデメリットと言えるでしょう。
杭基礎の工法には、大きく分けて支持杭と摩擦杭があります。
支持杭は、例えば盛り土などで地盤が軟弱な場合に採用されます。柱状改良や鋼管杭と呼ばれる杭を奥の支持層まで打って建物をしっかりと支える方法です。
摩擦杭は、地盤の軟弱な部分が厚く、杭を支持層まで到達させることが難しいケースなどに採用されます。杭を凹凸状に打ち、杭と土の間に発生する摩擦の力を利用して基礎を支える方法です。
杭基礎を採用するのは、地盤が弱く安定感が不十分な場所です。
そのため、杭基礎単独ではなく、杭基礎の上にベタ基礎や布基礎を設置することが多くなっています。
ベタ基礎
ベタ基礎は、床下全体を鉄筋コンクリートで覆い、床下に空間を作る基礎のことです。地面に蓋をしているような仕上がりになります。地震の揺れにも強く、地震が多い日本には最適な方法の一つです。
全面が土台となるので、根を張る地盤が弱くても施工できるケースがあります。耐久性に優れ、地面からの湿気を通さないのでシロアリの発生も防いでくれる点がメリットです。
全面に敷き詰めるのでコンクリートの使用量は多くなりますが、杭を打つ手間や土を掘る量は少なくて良いため、比較的施工がしやすいです。一方で、新築の場合は数年間コンクリートから水分が出るため対策が必要な点がデメリットと言えるでしょう。
布基礎
布基礎は、地盤に基礎を直接設置する直接基礎の工法の1つです。建物の主な柱や壁の下にコンクリートを設置する方法です。日本の木造住宅において古くから使われてきました。ある程度地盤の強度が求められる工法です。
柱や壁の重みで建物の負荷が集中する部分にのみコンクリートを敷設するので、地盤に接する面積が小さくなります。そして、ベタ基礎に比べるとコンクリートの使用量は少なくなります。そのため、ベタ基礎より軽量で、地盤への負担が小さい点がメリットです。
その反面、床下を覆うベタ基礎とは異なり、床下に土がむき出しになります。その結果、床下に湿気が溜まりやすく、シロアリの発生リスクが高まるのがデメリットと言えます。防湿対策と、定期的なシロアリ点検が必要です。
独立基礎
地盤に基礎を直接設置する直接基礎の1つで、主要な柱の下にだけコンクリートを敷設します。
布基礎よりさらに地盤に接する面積が小さいので、布基礎を行う地盤よりも強度の高い地盤に向いている工法です。
日本は地震大国であり、加えて近年の大規模地震の傾向から、一般住宅の基礎としてはほとんど使われていません。基本的には玄関ポーチの柱などに部分的に利用することになります。
建物でも住宅以外であればコンクリート使用量が少ない独立基礎が施工されるケースもあります。
SRC基礎
蓄熱床工法や逆ベタ基礎とも呼ばれています。
床下空間がなく、床下に砂利やコンクリートを敷き詰めて密閉構造にする方法です。コンクリートにH型鋼材を組み込む為、強度が高いという特徴があります。
メリットは、地震の揺れを吸収して分散するため耐震性が高く、床下がないため湿気やシロアリの被害リスクが少なくなる点です。また、地中からの熱を建物に伝えやすいため、夏は涼しく冬は天然の床暖房効果が期待できます。
しかし、床下空間がないということはSRC基礎では給排水の配管を基礎コンクリートで埋めてしまうため、一度設置すると位置の変更ができず、将来リフォームに制限がかかるところがデメリットです。